債権回収物語vol.2
vol.1https://h-maenosono.com/債権回収/289.htmlから続く
年始に管理担当主任調査役付というやたら長い名前の部署に配属となった私にまず待っていた仕事は、「償却」であった。
これは、不良債権処理の最終局面になるのだが、説明が必要だろう。
銀行は、債権が焦げ付いたとき、もちろん回収に走るのだが、回収できないこともある。
たとえば、担保は競売済み、保証人はいない場合に、債務者が破産したときである。こうなると、もうこれ以上回収が難しい。
もちろんウルトラCを使って回収する手段は残っている。でも、そこまで手間ひまかけても、回収額があまり期待できないと判断した場合、「回収は困難と判断される」。
この回収が困難と判断された、「回収不能額」を、Ⅳ分類と呼び、このⅣ分類額を銀行の貸借対照表に載っかっている「貸出金」勘定から切り落とす作業が「償却」である。
この作業のためには、まず回収が困難であることを疎明する必要がある。そのための資料集めに苦労するのだった。
次に、回収困難な金額を1円単位で計算する必要がある。これはこれで結構めんどうな作業である。
1件1件償却の稟議書を作成し、本店とも調整する必要がある。本店から夜遅くでも質問が飛んでくる。
毎日22時まで事務所で作業する毎日だった。通常、銀行は営業担当のほうが残業を多くするのだが、この季節は償却担当者のほうが残業が長い。
もちろん、償却したからといって、借金がチャラになるわけではない。当然、債務者など本人には知らせない。その後も償却後管理という仕事はなくならないのだ。
つまりは貸借対照表をキレイに見せるため、不良債権比率を少なく見せるためのトリックに過ぎない。
不良債権処理が進んだと新聞では書かれているが、実態は不良債権を塩漬けにしただけなのであって、債務者と債権者両方の苦しみはなくなっていないのである。
〜つづく〜
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