債権回収物語vol.5

vol.4に続く

 

競売するにあたり、まず現地を見に行く。

農家を対象としており、秋田は10人農家がいれば9人はコメ農家みたいなところがあるから、担保といってもほとんど田んぼだった。

田んぼを見るとき、ポイントがいくつかある。

一つは、形と広さだ。せめて1反くらいはないと売れそうにない。

1反とは、10アール、1,000㎡、333坪である。

よく、テレビで300坪の超広い物件!なんてやったりしているが、農家的には300坪なんて問題にならない狭さだ。

基盤整備といって、区画整理をしてある土地であれば、だいたい3反で区画されている。広いところでは、5反区画のところもある。

大潟村にいくと、1町歩区画だったりする。1町とは1ヘクタールのことだ。

形も長方形でないと、トラクターが入りにくい。三角形だったりすると、これも農家がいやがって買い手がつきにくい。

基盤整備されているところのポイントとしては、土地改良区の賦課金を滞納しているかどうかが問題となる。

土地改良区とは、いわば区画整理事業の補助金の受け皿みたいな団体である。農業に関わりの薄い人にとっては、これが団体を意味することすら知られていないが、農業においては、極めて重要なステークホルダーの一つである。

この区画整理事業(土地改良事業というのが普通だが)は、ほとんどが補助金だが、一部は自己負担がある。その自己負担分は、農家から、賦課金として徴収する。これを延滞している人がいるのですね。

そして、こちらを延滞しているような人は、だいたい土地改良区の賦課金も延滞しているのである。

そうすると、その賦課金は、人についているのではなく、土地についている(土地改良法にそう書いてある)ので、土地を買った人が延滞している分も払わないといけないのですね。

そのため、土地改良区の賦課金の延滞分が、競売にかける土地の評価額から引かれて評価することがある(裁判所によって違うようだが)。

そうなると、土地の評価がただでさえ競売で安いのに、余計安くなるわけです。

するとですね、競売するのにもお金がかかるので(これはあとで述べる)、費用倒れという事態が発生するのです。

そうなると、競売は中止になってしまい、一方、競売のため払った費用は返ってこないので、「損するだけ」になってしまうのですね。

だから、競売しようにも競売できんよ、ということがあるわけです。

ただまあ、「だから担保は処分できない」という疎明の資料にはなります。

(つづく)


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