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農業資源経済学汎論(食料自給率の向上が必要との意見への反論)

公開日: : 農業経済学

食料自給率を上げるべきだという話について考える。

1961年の農業基本法から、1999年の食料・農業・農村基本法に改正された際、論点の1つが食料自給率の目標設定であった。

政府として目標を掲げるべきという農業団体と、それはできないという経済団体とが対立した。

最大の問題は、「一人当たりの消費量」について目標を設定することにもなるが、それは自由主義・民主主義社会で妥当なのかどうか?

結局、目標を設定することになり、2010年で45%(カロリーベース)となっている。←達成されてない。

このため、豚肉の消費を減らせば自給率は上がる(豚肉のえさは海外から輸入しているため)ことから、油をあまり取るなというキャンペーンもなされた。

それは個人の自由だという点に対し、公衆衛生学者などは「油の取り過ぎで生活習慣病になり、社会が尻拭いしているのだから、それなりに社会の意見を取り入れよ」と反論していた。

<食料自給率を上げるべきだとする論拠>

1食料安全保障(food security):量に心配がないこと

なお、food safetyは質の問題である。量に心配がなくなるから自給率を上げるべきだという考え。

2世界の食料需給(貧しい国の食料問題)

1996年ローマ食料サミット:地球上に8.5億人の栄養不足者があり、これを半減しようとした。

日本は世界最大の食料輸入国であるから、貧しい国では食料が不足することになるのではないかという指摘がある。そこで、全ての人に常に必要な食料を供給できることもfood securityではないかという考え方がある。

national な food security:戦争状態

global な food security:貧困問題

地球規模で考えても、自分の国民の食料は自国でまかなうべきだから、自給率を上げるべきだという考え。

3農業の多面的機能

農業の多面的機能を維持するためにも、食料自給率の向上が必要だという考え。

<批判>

1「食料安全保障の観点から、食料自給率の向上が必要」は妥当だろうか?

そもそも不測の事態を「率」で考えてよいのか。絶対量で考えるべきではないか。国内農業に依存しすぎるのもリスクが高く、供給源の多様化を確保すべきではないか。

また、食料生産に欠かせない石油・肥料のルート確保なども戦略をたてなければならない。

単に「自給率を上げればよい」というのは、「安心」の問題であって、「安全」の問題になっていない。安心の問題は、すぐに恐怖に転換されてしまう。もちろん安心も大事だが。

 

2また、「世界の食料需給からみて、食料自給率の向上が必要」は妥当だろうか?

イギリス・ドイツは自給率が上がり、食料が過剰で困っており、ダンピング輸出している。これが世界の需給に役立っているのか。

ダンピングにより、農産物価格が下がると、その国の農業停滞につながある。もともと収益が悪いところに先進国の産物をつぎ込むのは問題がある。

また、貧困層は購買力が極端に低い。購買力がないと食料は回って行かない。問題は単純ではない。


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